
アケビコノハ という名称だけきくとどんなにメルヘンな生き物かと想像したくなりますが、実物や写真をみると嫌われがちな蛾の仲間です。
一般的には存在に興味をもたれづらいアケビコノハの生き方を紹介します。
枯れ葉の妖精?アケビコノハの生態とは
害虫の悪名
アケビコノハはチョウ目ヤガ科の生命力たくましい蛾の一種です。名前の由来は幼虫のときにアケビの葉っぱが好物なことと、みためが木の葉のようだからです。みたことはあっても名前を知っている方は少ないかもしれません。
しかしながら農家さんでは害虫としてあまりにも有名な虫です。アケビコノハは成虫になると果物の甘い汁が大好物で、冬場以外は夜な夜な果樹園に大群で飛来して汁を吸いにきます。
汁を吸われると皮に茶色い跡ができてそこだけへこんだりやわらかくなってしまうので、正規では売り物にならなくなります。
直売所などで叩き売りのようにして販売してもあまり利益は出ません。とりわけ果物農家さんにとっては、天候の次にストレスの原因になっている虫です。
昼間に駆除すれば良いではないかと思われるかもしれませんが昼間は果物の世話もありますし、強い薬を散布するなどは二次被害もあり対策には限界があります。
冬は枯れ葉模様に変身してみつかりにくいように過ごしています。もはや枯れ葉になっている状態を「擬態」ともよびます。農家ではなくても住宅地にもよく生活しています。
観察するまでもなく駆除しようとする方が多いでしょうが、よくよくみると面白い模様をしています。羽の内側には立派な目玉模様があります。これは鳥などの天敵を驚かせるのに役立っているといわれています。
幼虫までは珍しいみもの
幼虫までは蝶でも蛾でもみためは同じ、かわいいか否かはみるひとの主観に委ねられます。
アケビコノハは春になるとアケビやムベなど限定的な植物に産卵します。蝶や蛾の幼虫は限られた植物のみをひたすら口にして成長する偏食家です。
ちなみに偏食に選ばれた植物を「食草」(しょくそう)とよびます。アケビコノハの幼虫はアケビやムベの葉をお腹いっぱい食べ続けてすくすくと成長します。
幼虫は飛べませんし、鳥のように親鳥が守ってくれることもありません。天敵から身を守るのは自らのからだです。
からだに触られると驚いて身を丸めます。そうするとからだの目玉模様がよくみえるようになります。人間にはあまり効果がありませんが、食べようとする天敵には効果があるようです。
身を守って大きくなると幼虫は木の葉を集めてくっつけるという作業をひとりでやってのけます。
そしてそのなかでサナギになるのです。サナギになるとからだのサイズにあった枯れ葉くっつけ隠れ家をつくります。サナギから無事に孵化すると一人前の蛾になります。
いうまでもないことですが、たとえ人間には忌み嫌われているアケビコノハといえども卵から成虫になるまではさまざまな困難と運の良し悪しがあります。
みつけたら直ちに駆除したくなりますが、農家さんでないのであれば逃がしてあげても良いのではないでしょうか。
吸糖鬼のような扱い
蝶々は大きいとひとを惹きつける魅力があるようですが、アケビコノハはそうもいきません。開張95~105mmという大きさは余計に嫌われる要素をもっています。小さいと見逃してもらえるところも大きいと同情が少なくなるのでしょう。
日本には全国に分布していますし、中国やロシア、東南アジアやアフリカの一部でも繁殖しています。
蛾の鱗粉が苦手な方は多いですが、アケビコノハの鱗粉に毒性はありません。お肌の弱い方はかぶれたり湿疹が出たりすることもあるようです。
もし家の中で発見したら、刺激して鱗粉まみれになるよりもビニール手袋などをしてそっと捕獲、外へ逃がしてあげるほうが楽かもしれません。
翅は少し力を入れるとやぶれてしまいますので、軽くもちましょう。お庭に小さいミカンの木などがあると夜に訪問されている可能性は高いです。
昼間は静止して木の裏などに潜んでいます。活動期は5~11月ですが、温暖化で暖かい時期が長くなると冬でも活動するようになるかもしれません。
鳥のように昼間ではなく人気のない夜間に果物の汁を吸いにくるというところが賢く好かれにくいのかもしれませんが、人間よりもつつましく生きているアケビコノハの名前と顔を覚えておきましょう。
まとめ
枯れ葉の妖精?アケビコノハの生態とは
害虫の悪名
幼虫までは珍しいみもの
吸糖鬼のような扱い